外国人雇用で「善意でもアウト」になるケースの紹介 | にほんのしごと

外国人社員を家族のように思い、彼らの困りごとを解決してあげたいと願う企業担当者は少なくありません。しかし、外国人雇用の世界では「善意」が必ずしも正解とは限りません。ビザ更新の書類を代わりに作ってあげたり、副業を黙認したりといった行動が、実は行政書士法や入管法に抵触し、企業と外国人の双方を破滅させるリスクを孕んでいます。本記事では、無知ゆえに「アウト」になってしまう典型的なケースとその回避策を詳しく解説します。

「善意のアウト」が発生する背景と重要性

なぜ、相手を助けようとする親切心が法律違反に繋がってしまうのでしょうか。そこには、日本の入管制度の特殊性と、法的責任の重さという背景があります。

複雑すぎる「在留資格」という法的制度

日本の入管制度は、世界的に見ても非常に厳格かつ複雑です。在留資格(ビザ)の申請は、単なる「事務作業」ではなく、個別の事情を法律に照らし合わせて判断する「法的判断」の連続です。素人が「これくらいなら大丈夫だろう」と良かれと思って行ったアドバイスや書類の改変が、事実と異なる記述を生み出し、結果として「虚偽申請」**とみなされるケースが後を絶ちません。

「業(わざ)」としての判断基準

行政書士法では、無資格者が「報酬を得て」「業として」書類作成を行うことを禁じています。ここで多くの人が陥る罠が、「1回だけだし、お金ももらっていないから大丈夫」という思い込みです。 しかし、法的な「業」の判断は、「反復継続して行う意思があるか」で見られます。会社として継続的に社員の書類を作成していれば、たとえ個別の料金を取っていなくても、職務の一環として「業」とみなされ、行政書士法違反に問われるリスクがあるのです。

企業ブランドと外国人本人の人生への影響

一度「アウト」の判定を受けると、その代償は甚大です。企業は「不法就労助長罪」により今後数年間の外国人受入れが停止され、社会的信用を失います。そして何より、善意で助けたはずの外国人本人が「強制退去」や「再入国禁止」となり、日本での人生を絶たれてしまうことこそ、最大の悲劇と言えます。

行政書士法違反となる「書類作成サポート」の特徴

具体的にどのような行為が「親切」を超えて「違法」となるのか、その境界線を明確にします。

理由書・事業計画書の「作成」と「修正」

最も危険なのが、申請に不可欠な「理由書」の代筆です。 OK: 本人が書いた下書きに対し、「この日付が間違っているよ」「誤字があるよ」と指摘する。 NG: 本人の意図を汲み取って、担当者が論理構成を考え、PCで文章をすべて打ち直して完成させる。 法的な整合性を整える行為は、行政書士の専管業務です。担当者が「よかれと思って」文章を整えた結果、事実と異なるストーリーが出来上がってしまうと、それは立派な非行行為となります。

報酬の発生しない「無償ボランティア」の罠

「個人的な付き合いだから無償でやってあげる」という場合も注意が必要です。行政書士法第19条の制限は、実務上、組織的に行われるものに対して非常に厳格です。企業の採用担当者が、社命として、あるいはルーチンワークとして無償で書類作成を請け負い続けることは、行政書士法違反として摘発の対象になり得ます。

代理提出(取次)と窓口同行の勘違い

「忙しい本人に代わって、書類を入管に持っていってあげる」という行為も、原則としてアウトです。 入管の窓口で申請を代行できるのは、本人、法定代理人、または一定の研修を受けた「申請取次者(行政書士や弁護士など)」に限られます。資格のない担当者が書類を預かって提出に行くことは認められていません。

入管法違反に繋がる「良かれと思って」の具体的行動

行政書士法以外にも、雇用現場での「善意」が不法就労を招くケースがあります。

「生活が苦しい」という声に応えたオーバーワークの黙認

留学生アルバイトが「学費を払うために、もう少しシフトを入れたい」と泣きついてきたとき、情に流されて週28時間を超えて働かせてしまうケースです。「頑張り屋だから助けてあげたい」という親切心は、法的には「不法就労助長罪」という重罪になります。

資格外活動許可のない業務への従事

事務職(技術・人文知識・国際業務)として採用した外国人が、人手不足の現場を見て「私も調理や清掃を手伝います!」と申し出たとします。 これを「なんていい子だ」と許可してはいけません。許可された在留資格の範囲外の業務に従事させることは、たとえ短時間であっても、また本人の自発的な意思であっても、資格外活動違反となります。

転職活動中の「無償手伝い」の受け入れ

内定を出した外国人が、入社日前に「業務を早く覚えたいので、ボランティアで見学や手伝いをさせてほしい」と言ってきた場合です。 これを無償だからと受け入れると、実態として「就労」とみなされ、不法就労となる恐れがあります。正式な就労資格への変更が完了するまでは、現場作業に関わらせるべきではありません。

「善意のアウト」を回避するための注意点

リスクを回避し、正しく社員をサポートするためのガイドラインを提示します。 「情報の提供」と「書類の作成」を峻別する: 「書き方の見本を見せる」「必要な書類をリストアップしてあげる」のは素晴らしいサポートです。しかし、実際にペンを持って書く、あるいはPCで入力するのは、必ず「本人」か「国家資格を持つ行政書士」でなければなりません。 専門家(行政書士)との顧問契約: 現場の担当者が一人で判断を迫られる状況をなくすことが重要です。困ったときに「これは法律的にやっていいことか?」をすぐに聞ける行政書士を確保しておくことで、善意が暴走するのを防げます。 在留カードの確認と管理の徹底: 感情的なサポートに走る前に、まずは対象者の在留カードの有効期限や、就労制限の有無を常にチェックする仕組みを作ってください。法的な基盤が崩れていれば、どんな親切も逆効果になります。

まとめ

外国人を思う「善意」は、正しい知識に裏打ちされて初めて価値を持ちます。行政書士法や入管法のルールを無視したサポートは、結果として大切な社員を不幸にしてしまいます。 「これくらい大丈夫」という油断を捨て、法に基づいた適正な雇用管理を行うことこそが、真の意味での「外国人への思いやり」です。

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