
2025年4月21日から、特定技能の外国人が訪問介護に従事できるよう制度が改正されました。これにより、慢性的な人手不足に悩む介護業界への人材確保が期待されています。一方で、外国人が訪問介護の現場で活躍するには、言語や文化、制度上の課題への対応が必要です。
この記事では、制度改正の背景や導入によるメリット、受け入れにあたって事業所が満たすべき要件について解説しています。
2025年4月21日から、特定技能の在留資格を持つ外国人が訪問介護に従事できるよう、制度が改正されました。従来、訪問介護に就ける外国人は、介護福祉士やEPA介護福祉士などの資格を持つ人に限定されていました。
しかし、深刻な人材不足を背景に、訪問介護の現場でもより多くの外国人を受け入れられるよう、制度の見直しが進められてきました。その結果、介護職員初任者研修の修了や実務経験など、一定の条件を満たす技能実習生・特定技能外国人も、訪問介護に従事できるようになりました。
出典:外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56271.html)
解禁の対象とされるサービスは、次の6つです。
● 訪問介護
● 夜間対応型訪問介護
● 訪問入浴介護
● 介護予防訪問介護
● 入浴介護定期巡回・随時対応型訪問介護看護
● 訪問型サービス(総合事業)
介護職員には高い専門性と現場対応力が求められます。
出典:外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001470180.pdf) 出典:外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について(報告)(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001457092.pdf)
特定技能外国人による訪問介護への従事が解禁された背景には、日本における介護業界の人材不足が大きく関係しています。日本では少子高齢化が進み、介護を必要とする高齢者の人数が増える一方、労働人口の減少によって介護に従事する人材の確保が困難になっています。
また、介護職の労働環境も、人材確保を難しくしている要因のひとつです。身体介助には体力が求められ、夜勤による不規則な勤務も多いため、職員への負担が大きくなりやすいです。
さらに、厳しい労働環境にもかかわらず給与の水準がほかの業種に比べて低い傾向にあり、働き手を募集しても集まりにくい課題があります。
出典:令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2023_jittai_chousagaiyou.pdf()
介護分野のなかでも、訪問介護は人材不足の進行がとくに深刻です。訪問介護は基本的にスタッフが単独で利用者宅を訪問し、身体介護を行うため、介護初任者研修以上の資格が必要とされます。
訪問介護に従事できるのは有資格者に限られていることから、担い手の数が限られており、人材確保が難しい状況にあります。また、利用者の都合に合わせてシフトが調整されるため勤務時間も不規則になりやすく、介護職にとっては身体的・精神的負担が大きい業務です。
特定技能外国人の訪問介護への従事が認められたことで、さまざまな効果が期待されています。
最も期待されているのは、訪問介護における人材不足の緩和です。日本では高齢者の増加にともない、訪問介護の需要も増加傾向にありますが、人材の確保が追いついていない現状もあります。
特定技能外国人を訪問介護に採用できるようになったことで、介護人材の幅が広がり、必要なサービスをより多くの高齢者に提供できる体制の整備が進むと見込まれています。
若年層の人材の確保という点でも、特定技能外国人の訪問介護解禁に期待が寄せられています。介護分野では、年齢層の高いスタッフが中心となってサービスを担っているケースが多く、若年層の人材確保が課題となっているためです。
一方で、特定技能外国人は比較的若い世代が多く、日本の介護現場でも若年層の戦力として活躍が期待されています。
外国人が訪問介護に携わることにより、介護サービスの質の向上も期待できます。たとえば、次のような効果が考えられます。
● 異なる文化的背景を持つ新たな視点や発想が生まれる
● 高齢者へ介護において通訳を介さず対応できるケースが増える
● 海外で習得した介護技術を日本の現場で活かせる
特定技能外国人が継続して働くことで、介護業界全体の業務効率や対応力の向上が期待されています。
特定技能外国人が訪問介護に従事できるようになったことは、日本だけでなく国際社会にとっても大きな貢献となります。日本で実践的な介護スキルや知識を習得した外国人が、将来的に母国で活かすことで自国の介護分野の発展につながるためです。
また、日本との良好な関係性を築く架け橋としても期待されており、人的交流の促進にも貢献します。
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特定技能外国人が訪問介護に従事するにあたって、解決すべき課題がいくつかあります。ここでは、具体的な問題点と、事業所が取り組める対策について解説します。
介護に従事する特定技能外国人には、日本語で利用者と円滑に意思疎通できる能力が求められます。とくに、訪問介護は利用者と1対1で関わる場面が多いことから、高いコミュニケーション能力が不可欠です。同様のことは、事業者と外国人材の間でもいえるでしょう。
訪問介護では、利用者の急な体調不良により迅速な判断と対応が求められる場面も多くなっています。事業所は、日本語の習得や日本文化に関する研修を通じて、外国人材が現場でスムーズに対応できるよう支援する必要があります。
訪問介護は介護施設と異なり、利用者の自宅を訪問する必要があります。地域によっては車での移動が不可欠です。訪問介護に従事する外国人が日本国内で有効な運転免許を持っていない場合、交通手段の確保が課題となる可能性があります。
交通手段の確保に対して、事業所が取り得る対策は主に3つあります。
ひとつめの対策は、日本人スタッフが特定技能外国人を利用者宅まで送迎する方法です。この場合、送迎担当者の確保と、スケジュールの調整が必要です。
2つめの対策としては、特定技能外国人に公共交通機関を利用してもらう方法です。バスや電車を利用すれば単独での移動が可能ですが、車に比べて移動時間がかかる可能性もあります。
3つめの対策は、本人が日本の運転免許を取得するよう支援することです。国際運転免許を持っていない場合でも、日本の自動車教習所で必要な講習を受けて運転免許を取得すれば、訪問先までの移動がスムーズです。
ただし、多言語対応の自動車教習所を探す必要があることに加え、教習費用の負担、取得までの時間がかかることが想定されるため、事前の計画と支援体制の整備が求められます。
訪問介護に特定技能外国人を受け入れる事業所には、日本語学習支援や日本文化への理解促進、生活支援などさまざまな面で外国人労働者をサポートする必要があります。教育プログラム構築やマニュアル整備、研修の実施といった受け入れ環境の準備は不可欠です。
しかし、現状では支援体制が整っていない事業所も多く、外国人材に対して丁寧な指導や支援ができる環境づくりが課題となっています。
国内の人手不足により、外国人材の活用に目をつけているのは日本だけではありません。高齢化が進む先進国のなかには、介護業界を支える人材として外国人の確保を進めているケースもあり、国際的な人材獲得競争が今後激しくなると見込まれます。
また、日本国内でも「外国人介護人材を積極的に採用したい」と考える事業所が増えており、今後は国内でも、優秀な人材を獲得するための競争が激化する可能性があります。
ここからは、訪問介護に従事できる特定技能外国人に必要な条件について詳しくお伝えします。
出典:厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html)
制度の改正により、訪問介護に従事できるようになったのは、特定技能「介護」または技能実習「介護」の在留資格を保有する外国人です。特定技能「介護」の資格を取得するには、日本語能力試験と介護技能評価試験への合格が必要です。
● 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上 ● 介護日本語評価試験
国際交流基金日本語基礎テストには6段階のレベルがあり、介護分野で特定技能1号を申請するにはA2以上が必要です。日本語能力試験は5段階で、N4は基本的な読み書きや、ゆっくり話される日常会話を理解できるレベルです。
介護日本語評価試験は、介護現場で使う必要な語彙や表現が身についているかを測る試験です。
日本語レベルが基準に達しているほか、介護技能評価試験に合格することも要件です。試験は次の3段階に分かれ、それぞれに必要な実務経験があります。
● 初級:6か月以上の実務試験
● 専門級:24か月以上の実務試験
● 上級:48か月以上の実務経験
技能実習制度における介護職種に準じています。
出典:一般社団法人シルバーサービス振興会「介護技能実習評価試験とは」(https://www.espa.or.jp/internship/system/)
一定の要件を満たしている人は、日本語能力試験と介護技能評価試験が免除されます。
● 介護の技能実習2号を良好に修了した人
● 介護福祉士養成施設を修了した人
● EPA介護福祉士候補者として就労・研修に適切に従事した人(4年間)
上記に該当する人は、日本語の試験と技能試験を受けることなく、特定技能「介護」として認められます。
特定技能「介護」を取得した外国人が訪問介護に従事するには、さらに特定要件を満たす必要があります。
ひとつめの要件は、介護職員初任者研修を修了していることです。介護職員初任者研修では、介護業務に必要な基本的な知識や技術を学びます。
講座には通学型と通信型があり、通信型では自宅学習とスクーリング(通学による実技演習)を組み合わせて受講する形式が一般的です。
2つめの要件は介護事業所等での実務経験が1年以上あることです。例外として、事業所の判断により実務経験が1年未満でも訪問介護を任せることも可能です。
ただし、日本語レベルが高いことや、一定期間にわたって同行訪問させることなどの条件をクリアする必要があります。
出典:厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001470180.pdf)
特定技能外国人を訪問介護に従事させるには、事業所側が現場で問題なく働ける支援体制を整える必要があります。ここでは、事業所に求められる条件について解説します。
出典:外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について(報告)(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001477766.pdf)
訪問介護では、利用者一人ひとりの生活状況や身体状況に合わせた柔軟な対応が求められます。そのため、特定技能外国人が適切にサービスを提供できるよう、事前に次のような研修を実施する必要があります。
● 訪問介護の基本
● 生活支援に関する技術
● 利用者や家族とのコミュニケーション方法
● 日本の生活様式
● 緊急時の対応方法や連絡先の確認
現場での実践がスムーズにできるよう、実用的な研修を行います。
特定技能外国人を訪問介護に従事させる際は、初めからひとりで訪問させるのではなく、一定期間は先輩職員が同行して実務を教える必要があります。
外国人介護職が利用者や家族との信頼関係を構築し、利用者の居住環境や特性に合わせた適切なサービスを提供できるようにサポートするためです。同行の回数や期間、指導方法は、外国人職員のスキルや日本語能力をふまえ、事業所が判断します。
キャリアの見通しを立てることは、外国人介護人材が日本で長く働くためのモチベーションにつながります。キャリアアップ計画を作成する際は本人の意向を確認し、日本語能力の向上や資格取得に向けた目標を設定しましょう。
訪問介護は利用者の自宅でサービスを提供するため、利用者やその家族から介護職員に対してハラスメントがあっても、外部から気づかれにくいという特性があります。
そのため、外国人介護人材を受け入れる際には、ハラスメントの未然防止や相談できる環境の整備が不可欠です。
外国人介護職の負担軽減や、緊急時への迅速な対応を実現するためには、ICTの活用を含む職場環境の整備が求められます。具体的には、次の項目の整備が求められます。
● 緊急時の連絡先や対応フローをまとめたマニュアル作成
● 緊急時を想定した研修の実施
● 緊急時にほかの職員が駆けつけられる仕組みづくり
● サービスの記録や申し送りを職員全体で共有できる体制づくり
外国人介護人材が、安心して訪問介護業務に従事できる体制づくりにもつながります。
外国人材が訪問介護をする際、該当する利用者やその家族に対して、あらかじめ書面で説明を行い、署名を得ることになっています。説明内容には、次の事項が含まれます。
● 外国人の介護人材が訪問する可能性があること
● 該当する外国人介護人材が、実務経験などの条件を満たしていること
● ICT機器を活用して業務をする可能性があること
● 利用者や家族が不安を感じたときに連絡できる事業所の連絡先
利用者や家族の安心感を高め、信頼関係の構築につなげます。
特定技能外国人が訪問介護に従事できるようになったことは、日本の深刻な介護人材不足の解消に向けた解決策として、期待が寄せられています。
一方で、外国人介護職には言葉や文化の違いといった課題もあり、現場で安心して業務に取り組めるよう、受け入れ事業所によるサポート体制の構築が求められます。
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